山内荒廃のこと

私が思うには、聖天様のご意向をお断りしたので、

必ずそのお返しがあるであろうと考えている。

きっと山が貧しくなるだろう。

又、弟子たちも一人一人と散り失せるであろう。

今の寺は、弟子も多く抱え、栄えているようではあるが、

実は多くの僧侶はだらだらとして、修行にも心が入らず、日々俗世間の話に興じ、ただただ語り合い、笑い合っているに過ぎない。

だから今のこの寺の状況は、私の本意とはかけ離れた状態になっている。

だから、たとえ、弟子等が散り散りになっても、又、今のように栄える時期も来るであろうと、

思い悩むことをしないでおこうと心に決めて、修行に励んでいた。

そんなある夕べ、夢を見たのだ。

数万の毘那夜迦が山の上に集まり、思い思いに材木に似た物を、四方八方に投げ落としている。

その中の一つは、江戸までも飛んでいったと見えたものもあった。

そんな夢をみた後、山内も乱れに乱れ、現実に多くの僧侶たちが皆散りぢりになってしまった。