僧侶様の法話
執筆者:瑞鳳天祥
本日は、位牌に付いてお話致したいかと存じます。
さて、位牌と申しますものは、祖霊の依り代として仏壇に祀られ礼拝の対象と成りますが此の位牌に関して意外と知られて居ないのは、抑位牌は、仏教では、無く中国の儒教に御座います。
孔子の居りました時代の儒教では、死者が出ると遺体を柩のまま一定期間屋敷に祀り実際に埋葬するのは、三ヶ月~七ヶ月後に行われ埋葬後に御霊の依り代として姓名、官職等を標した【木主】と申しますものを故人に見立てて御霊を慰めて居りました。
此れが位牌の原型と謂われるもので古くは、室町時代迄遡る様で御座います。
さて、此の位牌が普及致しますのは、禅宗の広まりと共に御座いまして室町時代の書物には、【位牌は、昔には、無かったが禅家(禅宗)でよく用いられる】と記述が御座います様に禅の普及と共に葬儀作法や位牌に関しても一般に普及し江戸時代には、定着した様で御座います。
此の位牌に関しては、別称を【霊牌】と申しまして意味合いは、故人の御霊の依り代としての意味合いは、先にも申し上げた通りで御座いまして位牌には、仏教では、戒名や俗名が記され仏壇へと祀られる訳で御座いますが仏壇に祀られる理由は、以前仏壇に関して講釈致しましたが仏壇は、佛樣の居られます世界を模したもので御座いまして其処へ祀る事で神佛の世界への到達並びに神佛と同じ位に入り敬う対象としてお祀りする訳で御座います。
さて、お話が些か変わりますが現在に置きましては、位牌に関しては、大まかに三種類御座いまして一つは、一般的に仮位牌と申しまして葬儀に用いる白木の位牌と寺位牌と申します寺院に納めます位牌残りは、本位牌と申します漆塗り若しくは、唐木の位牌が御座います。
寺位牌に関しては、要するに寺院に納める事で僧侶の供養が常に受けられる事に御座いまして仕様等は、御寺院毎で変わりますので割愛致しますが本題は、一般的に申します本位牌と白木の仮位牌に付いてで御座います。
往々にして葬儀に於いては、白木位牌を用いて葬儀を行い忌明けと共に本位牌へと変える事が常識の様に謂われますが「実際、仮位牌のままでは、不都合が有るのか、必ずしも四十九日若しくは、一周忌迄に替えなければ成らないの?」と謂う御質問をお受け致しますが率直な答えとしては、【どちらでも構わないが実質上些か支障が有る】と申しますのが答えで御座います。
其の理由に付いては、寺位牌にも関係が御座いまして主に寺位牌に関しては、塗り位牌や唐木位牌をお祀り致します。
其の理由は、一度納めて戴いた位牌に関しては、離壇(檀家を辞める事)や其の他の檀家様からの申し出が無い限り永代に渡り御供養致します。
其の為、白木よりも塗り位牌の方が経年劣化も少なく永代的にお祀り致す事が出来る事が最大の理由で御座います。
其の理由に目を付けたのが所謂、葬祭業界の方々で御家庭の塗り位牌を勧めるのは、御察し下さいなのです。
所謂、家庭に於ける塗り位牌の習慣は、比較的新しく戦後に於いての事に御座いまして其までは、白木位牌が主流で塗り位牌は、特別な方若しくは、お金に余裕の有る方が塗り位牌を求められて居りましたが現在は、本漆の他にカシュー塗料等も出て参りました事で価格帯にも差が出て居りますが当時の塗り位牌は、高級な品で有った事は、確かで御座います。
お話を戻しまして実質上の問題とお話致しましたが一つは、先の通り経年劣化の問題が御座いまして謂わば日焼けや汚れ等の問題が御座いまして白木位牌の場合年数を重ねるにつれて見た目が悪く成るデメリットが御座います。
もう一つは、位牌の大きさが御座います。
謂わば葬祭で用いる白木位牌は、仏壇にお祀り致します位牌よりも大きく作られて居ります(祭壇に合わせたサイズ)其の為、御家庭の仏壇に納まらない場合が大半で御座いますから合わせて作り直すならば高級且つ劣化の少ない塗り位牌が良いし法要に合わせる事で一つの区切りとしての意味合いが御座います。
此の二つの理由から塗り位牌に替える事が常識の様に謂われる理由で御座いますが本来は、白木位牌でも塗り位牌でもどちらでも構わず祀られる方の御気持ち次第で構わないと謂う事で御座います。
先にも申し上げた通り白木位牌で有れ塗り位牌で有れ依り代として祀る際は、必ず開眼法要を致します。
此れは、仏壇のみ為らず仏像や御札御守りも同様に行われ開眼法要を行われ無ければ仏像にしても単なる置物に過ぎない様に位牌に関しても白木位牌を祀る時より開眼を行い塗り位牌に替える際も其の御霊を移す所作が行われる訳で御座いますから白木位牌を【仮位牌】と呼ぶのも些か語弊が御座いますし白木位牌で有っても立派な位牌に御座います。
然しながら白木位牌の場合、経年劣化等の不具合が起きやすく塗り位牌に比べお手入れ等の難しい事から【どちらでも構わないけれども長期に於いてお祀り致すには、実質上些か支障が有る】と謂う回答に成ります。
巷では、白木位牌のままだと成仏出来ない等の様々な俗説が御座いますが位牌の材質仕様に関しては、きちんと開眼法要が為されれば立派な依り代で御座いますし以前よりお話致して居ります様に供養の基本は、心で御座いますから御祖先並びに神佛に対して素直な心を向けられる象が一番肝要で御座います。
天祥 九拝
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