聖天様と大根

読者投稿：瑞鳳天祥様

皆様日々御精進の事と存じます。

さて、聖天様をお祀りして居ります寺院では、必ず大根が御供して有ります。

本日は、此の大根の縁起（事の起こり）に付いてお話し致します。

此の内容は、愚僧が口伝で伺った内容なので真偽は、定かでは、有りませんが御伽話程度に読んで戴くと幸いです。

聖天様と大根は、大変密接な関係が御座いまして聖天様の御神紋には、交差の二股大根と巾着袋が必ず描かれて居ります。

此の巾着袋は、お父様の大黒様もお持ちですが、聖天様の無限の財宝と功徳を意味して居り其の袋より衆生に功徳と財宝を分けて下さるそうで聖天様の特別な供物〔清浄歓喜団〕も其の巾着袋を象ったとされます。

お話を戻しますが大根に付いては、幾つかの逸話が存在し一つは、夫婦和合の意味を持ち供物も二股が最上とも言われます。

此の二股大根は、お父様で有る大黒様とも深い関係が御座いまして大黒様の御縁日には、お餅と二股大根（まっか大根）が御供されます。

其の大黒様と二股大根の縁起とは・・・・。

此は、神代の時代の事、当時より大黒様は、大変人気の高い神様で其の人気を羨んだり快く思わない神様も少なからず居りました。

其の神達は、密談を重ね一計を立てる訳ですが・・・。

其の計画とは、大黒様の暗殺計画で現代風に題名を付けるならば「○曜サスペンス、大黒様殺害計画・・・。」

でしょうか、何時の時代も嫉妬や憎悪は、恐ろしいもので其の計画とは、大黒様の大好きなお餅を鱈腹食べさせお腹を破裂して殺そうと企てます。

さて、場合は、変わり何も知らない大黒様は、其の計画を知らず出されるままに八升ものお餅を平らげます。

其の帰り道、流石に食べ過ぎた大黒様、お腹が膨れて破裂寸前です。

其処で消化を助ける大根を求める訳ですが・・・。大根には、消化を助ける酵素が有る事は、科学的に証明されて居りますが古来は、おかずの他に薬の意味（胃の調子を整え其の白色から毒を消す効果が有ると信じられて居ました。）も有ったそうです。

近場の小川では、庄屋の小間使の娘さんが大根を洗って居り大黒様は、分けてくれる様に懇願しますが小間使ですから大根の数が減ると暇を出されると泣き始めます。

ほとほと困った大黒様、大根の山の中に二股大根を見付けます。（聖天様がお父様を案じて忍ばせたかも知れません）

其の二股大根の片割れを戴く事で二人共、難を逃れた事から大黒様の御縁日には、二股大根を供えるそうです。

此の事から聖天様も甘いものやお餅が大好きですしかなり召し上がる事から其の毒消しとして御供されるお話が一つ、もう一つは、往々にして聖天様のお姿は、牙が片方無い事が多く（仏教に帰依する前、他の神様の怒りを買い折られた説と十一面観音様に求愛した際、其の愛の証として自身で折られ其の象牙を送った説の二説御座います。）其の象牙を象った大根を供えしたと謂う説が御座います。

もう一つは、聖天様は、清浄を好まれる為、白いものを好まれるそうで大根の毒消しの効果や其の白色の意味（清浄）から大根を好まれるとの説も御座います。

余談ですが古来より言葉の他に色にも魂が宿るとされ赤や紅は、血の色に通じ生命の色から魔除けや祝いに多く用いて来ました。

白色は、何も染まらない事から清浄を意味し結婚式の白無垢や葬送の死者の着物や参列者の白衣（古来は、参列者も白装束を着用、現在の黒装束は、戦後で御座います。）

以上の縁起から聖天様に二股大根には、和合の意味と大根本来の効能（消化酵素）又、色霊に纏わる効果（清浄、浄化）の意味等が合わさり二股大根が良いとされますが、一般流通では、規格外で御座いますから手に入らない品ですが産直や農家の無人販売で極稀に購入可能です。

しかし、二股大根に限らずとも心を込めて御供戴いた御供物は、其の心と共に聖天様は、受け取られますので何より自身の心を御供する気持ちで為される事が肝要で御座います。

天祥　九拝

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