このお話は、村木 幸次郎さんが泉庄太郎先生の伝記をまとめられた『泉聖天尊』より 抜粋引用した泉庄太郎先生と聖天様のお話です。
小坊主
前回は泉先生が聖天様から頂いたお力で人助けするお話だったけど、覚えてる?
泉先生、聖天様から頂いたお力で人助け
このお話は、村木 幸次郎さんが泉庄太郎先生の伝記をまとめられた『泉聖天尊』より 抜粋引用した泉庄太郎...
男性
もちろん!
小坊主
今回のお話は、泉先生の人助け話を又一つ!
男性
はい!楽しみです。
泉先生、不思議なお話4
たぬきのなやみ
小坊主
阿波から泉先生に助けを求めに男性が駆けつけたんだ。
小坊主
その男性が、
相談男性
「先生、うちの息子の様子がどうも変なんです。」
小坊主
と言うんだ。
小坊主
すると、泉先生はこれを聞かれただけで、じっとその人を見て、
泉先生
「何にも食べず、一言も言わず、だんまりこくって、ろくろく寝もせず、布団の中にもぐり込み、又、今度は血相をかえて飛び起きて、家の縁側の柱につかまって、登ったり降りたり、それから庭へと飛び降りて、庭木に登り降りしたり、これを繰り返しておりはせんか。」
小坊主
男性は、
相談男性
「全く仰る通り。先生どこからご覧になったんな。」
相談男性
「その通りのことしとるのです。」
相談男性
「まぁ、お聞き下さい。」
小坊主
と言って、息子さんの様子を語り始めたんだ。
小坊主
相談に来た老人が言うには、
相談男性
「実はこの度、息子が大学を出ました。」
相談男性
「この土地で大学を出るのは始めてじゃ、めでたい。」
相談男性
「お祝いをしようと近所の人が喜んでくれました。」
相談男性
「それは有り難いが、無駄遣いはやめて、皆の為になる農具をつけよう、これなら後々まで残って、よい記念になるからと私が申すと、そりゃええこっちゃと、早速道普請にかかりました。」
相談男性
「土地は私が出しました。」
相談男性
「工事がずんずん進んで行く中に、古い大楠につき当たりました。」
相談男性
「こういう木を切るのは、勿体ない、あまり邪魔にもならんから、残しておこうということになりました。」
相談男性
「よく見ると、太い幹はがらんどうで、一丈あまりの高さで、上の方は、大風に吹き折られておりました。」
相談男性
「ところがその夜から、至って元気にしておった息子の様子が急に変わって、今先生が仰った通りにするようになったのです。」
相談男性
「家内中でびっくりして、気が触れたのかと心配して、色々聞くが、一向に見向きもしません。」
相談男性
「一晩、二晩たった今朝になっても、様子は同じなので、」
相談男性
「これはただ事ではないと、大騒ぎになり、」
相談男性
「これはもう、ほうのよく効く先生にお縋りする他ないと、」
相談男性
「我が子可愛さに飛んで参りました。」
相談男性
「どうかお助け下さいませ。」
小坊主
と言うんだ。
小坊主
泉先生は、
泉先生
「工事中、気がつかんで、その大木の根本へ沢山泥をかけた。」
泉先生
「そのために、洞穴への入り口が潰れてしもうた。」
泉先生
「中に子持ちの狸が住んどんじゃが、外へ出ようにもでられん。」
泉先生
「餌も取れず、水も飲めず、何とかして外へ出ようと足で泥を掻きのけても、のかん。」
泉先生
「上の方をみると、明かりがさしているから、苦労して上によじ登ってみるが真上はつまっておって、そこからはすり抜けられん。」
泉先生
「たまらんから下へ降りる。」
泉先生
「そこが可哀想に畜生じゃ。」
泉先生
「無駄と気づかん。」
泉先生
「下から上へ、又、上から下へと夢中になって繰り返した。」
泉先生
「とうとう根気も尽きてしまいに虫の息になって、横になってしもうた。」
泉先生
「3~4匹の可愛い子がそんなこととは知らんで、これ又むやみと乳にしゃぶりつくが、ちっとも出ん。」
泉先生
「出ん乳房にしゃぶるついとるのが見える。可哀想に。」
泉先生
「このままではそう長くはもたん。」
泉先生
「さぁ急いで帰って、穴の入り口の泥をのけて、しんそこから一心にすまんすまん、つい気が付かなんだ。」
泉先生
「どうぞこらえて下さいと、畜生ではなく、人間にことわる通りに言うて、狸が好きそうなものを、沢山やってごらんよ。」
泉先生
「狸はすぐ、おじずに食べて、元気付く頃には、あんたの息子はんも、けろりと治って、元の通りになる。」
泉先生
「おおかわいそう。私も今すぐここから、よくことわけをいうて、おことわりをしてあげる。」
泉先生
「ただの畜生じゃとほうけんにしてはいかん。」
泉先生
「生きようとする心。ことに母親心は、人間と少しも変わりはない。」
泉先生
「ただ、出たい出たい。あの明かりの指す方へ登ったら出られるだろうという、ただ思いつめた一心。それは強いもんじゃ。」
泉先生
「その一心になってすること、そのままが、素直な人柄のお前さんの息子の心にうつる。」
泉先生
「これを感応と言うのじゃが、心にうつって、それに引かれて気持ちが狸と同じになって、今狸と同じことをしとるんじゃ。」
泉先生
「息子さんも夢中じゃから、何を聞いても、相手にせんのじゃ。」
泉先生
「早う帰って、両方を助けておくれよ。」
小坊主
とお答えになったんだ。
小坊主
老人は飛ぶ思いで帰るなり、
小坊主
大楠の根本の泥を掻きのけたら、
小坊主
先生が言われた通り。
小坊主
持って行った餌を早虫の息になっていた母親にやると、恐れずすぐに食べだした。
小坊主
まぁ間に合って良かったと、ホッとして、
小坊主
犬などに狙われぬようにしっかり垣をして帰って、
相談男性
さて、息子はどうかしら・・・
小坊主
と見まもって居たんだ。
小坊主
それから随分長い時間が経った。
小坊主
ひよっと「もう何時か知らん。」と一言。
小坊主
一同「やあ気がついた気がついた。」と大喜び。
小坊主
本人は、怪訝そうな顔で辺りを見廻す。
小坊主
今の今迄、自分が何をして居ったのか一向知らん様子である。
小坊主
こんなにありがたいことがあるかと、老人は他の人々と連れ立って、御礼に来た。
相談男性
「先生本当に恐れ入りました。あらたかですなぁ。」
相談男性
「お陰で、息子も狸の親子も助かりました。」
小坊主
と涙を流して喜んだって。
小坊主
居合わせた村木さん達も、先生の不思議は、
小坊主
これまでも見飽きるほど見てきていたはずですが、
小坊主
この時ばかりは本当にびっくり恐れ入ったということです。
小坊主
そして、皆揃って、先生の方へ向いて、先生とご一緒に神さん、聖天様へ心から御礼のご挨拶をしたんだって。
小坊主
後で聞いたことなんだけど、一部始終を聞かされた当の息子さんはじめ一同が、
小坊主
その明けの朝「まだ居るかしら」と、大楠の処へ見に行ったが、狸の親子はよそへ行ったらしく、何も無かった。
小坊主
まぁこれでよかったと胸をなでおろしたとか。
小坊主
先生はこの時、参詣の一同に
泉先生
「人間と畜生は別々のもんじゃない。」
泉先生
「深う繋がっとる。むやみとかけへだてして、虐めんようにな。」
泉先生
「いつも皆人繋がりの生き物仲間と思うて、労ろうぜ。」
泉先生
「それが慈悲じゃ。そういう気持ちで居ると、人間同士も、他人さんへのさわりもよくなり、自然と我が身に徳がついてくるんじゃ。」
泉先生
「徳ほど貴いものはない。この徳を積んでいるのを見て、怒る人も神も居ない。」
泉先生
「皆が喜ぶ。天地皆が喜ぶことをせっせとしような。これが極楽じゃが。」
小坊主
と言われたんだとか。
小坊主
一同固唾を呑んで、ニコニコしながら互いに「仰る通り」と頷きあったんだって。
小坊主
尚、先生は付け足された。
泉先生
「これはのぅ。狸が怒って大事な息子に、取り憑いたと思ったら大間違いぞ。」
泉先生
「ここは大事なところじゃ。取り違えたり、勘違いのないように。」
小坊主
とかんで含める様に締めくくりをつけられたんだ。
小坊主
そこに居た方々は、しみじみと慈悲心の貴さと、慈悲の行いの仕方、
小坊主
それから、物事の受け取り方をしっかりと悟らされたんだって。
小坊主
本当に骨身にしみたと記してあったよ。
小坊主
この時から、村木さんの生き物に対する気持ちが、サッと変わったんだって。
小坊主
皆大きい家族じゃ。それぞれ一人なみじゃと思える様になったと言うんだ。
小坊主
今回のお話はここまで。
小坊主
では、次もお楽しみに~
合掌
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泉先生が話された生駒の聖天様と米屋のお話
このお話は、村木 幸次郎さんが泉庄太郎先生の伝記をまとめられた『泉聖天尊』より 抜粋引用した泉庄太郎...
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