小坊主
前回のお話は湛海律師が本堂建立したお話だったけど覚えてる?
湛海律師が本堂建立のこと
小坊主 前回のお話は梶氏が隠居願いを湛海律師にしたお話だったけど覚えてる? 女性 はい。湛海律師が聖...
小坊主
ちょっと梶金平一雄さんのことについて振り返るよ。
小坊主
1687年、貞享4年春の頃、
湛海律師
隠居願いの祈願のことで、金平とも不仲となった。
女性
そうでしたね。
女性
聖天様から隠居するとよくないからやめておけ、と言われたので、
女性
湛海律師にご祈祷をお願いしたけど断られて、
女性
しょうが無いので湛海律師はお弟子さんに浴油供をさせたんでしたよね。
小坊主
そう。でも、結果は不成就で梶氏は怒ってしまって縁が切れたんだよね。
湛海律師
金平とも不仲になったので本堂建立の資金も枯渇してしまった。
湛海律師
嫌気がさしたのか洞元も病気と称して大阪に立ち去ってしまった。
女性
そうでした、そうでした。
小坊主
そんなこんなで、湛海律師がいろいろと雑事に追われていた最中のこと。
湛海律師
梶氏は仕方なく隠居をしたい旨を、城主忠国に願い出られたんだ。
小坊主
聖天様にやめておけと言われたのに、やはり申し出たんですね。
女性
それで?
小坊主
城主忠国は大層ご立腹になり、
小坊主
「不届きにつき、当国から立ち退くか、切腹するかに相決め申せ」と喧ましく申された。
女性
あぁ、やはり聖天様が言ったようにうまくいかなかったんだ。
小坊主
そうだね。
女性
で?どうなったんですか?
小坊主
梶氏の相談役であった大阪の日下利左衛門は、たいへんに困惑し、金平を姫路から呼び寄せて、ともに山に登って来られた。
女性
そりゃ一大事だもんね…
湛海律師
梶氏は心労のためか見る蔭もなくやつれ果て、まことに気の毒な様子に見えた。
小坊主
そりゃ、立ち退くか、切腹するかを迫られているからね…
小坊主
今度は聖天様にお願いしてくれるのかな?
女性
湛海律師どうされたんですか?
湛海律師
少しばかり祈願をしたところ、不機嫌のまま姫路に帰っていかれた。
女性
また、少しばかりとか…もっと必死でご祈願は…駄目ですかね?
小坊主
ま、怒るわな。そりゃ。
女性
で、不機嫌のまま姫路に帰っていかれたんだ。
女性
で?どうなったのですか?
湛海律師
それからしばらくして、金平の願いも聞き届けられ、無事に隠居の生活に入られた。
女性
あぁ、それでも、ご祈祷したから、聖天様、助けてくださったんだ♡
小坊主
よかったですね!!!
女性
でも縁は切れたままだったんですよね。
湛海律師
その頃になると、本堂建立成就を聖天に祈願したおかげで、金子も次第に集まった。
女性
そうでしたね。聖天様パワー炸裂!
湛海律師
年が明けた1688年、貞享5年の春を迎える頃ともなると、工事も軌道にのりだした。
小坊主
1680年に自ら刻んだ不動明王坐像を本尊として安置して、
小坊主
先程仰っていたように1688年、貞享5年春に工事が軌道に乗り出した。
湛海律師
そこでふたたび閉関をして、穀類を断ち、塩味も棄て、洞元も呼び迎えて、念願の十万枚の護摩供を修しようと心に決めた。
小坊主
また厳しい修行ですね。
女性
洞元律師を呼び戻して、戻って来られるのでしょうか?
小坊主
ま~修行に入れるということは、戻って来てくれたんでしょうね。
女性
工事が終わったのは1688年、貞享5年7月25日だと前回のお話で言ってたから、工事が終わる前に修行を始められたんですね。
小坊主
そうみたいだね。思い立ったら我慢出来ない性分みたいだから。
湛海律師
閉関を始めて、数日経ったある日、心を保ち禅定に入っていると、盛んに障礙がある。
湛海律師
そこで、三股杵を手にして、軍荼利明王の境地に入り、厳しく障礙をうち鎮めたところ、
湛海律師
天尊が姿を現され、
聖天様
「やれ、俺は聖天であるぞ、そのように、降伏させるようなことはするな」
湛海律師
と申された。
小坊主
聖天様、ご機嫌悪いですね。
女性
で?湛海律師はどうなったんですか?
湛海律師
私は怒って、「どのような障者かと思っていたら、近ごろの私の修行には、ふさわしくないお方であったか」といった。
女性
聖天様に…なんという言葉を…
湛海律師
ところが聖天は、私を目覚めさせるために、お見えになったのである。
女性
えっ?どういうことなんですか?
聖天様
「俺が出てきたのは、障礙をするためではないのだ。
聖天様
湛海よ、よく聞け、おまえは自分の大事があるときには、俺を頼み敬うが、
聖天様
用がなくなると、蔑んで捨ててしまう。
聖天様
しかし、俺はおまえを捨ててはいないぞ。
聖天様
前にもよき知らせをしてやったが、心にとめなかったので、今日は、直々にいい聞かせようと思って、このように出てきたのだ」
湛海律師
「それでは、どのようなことでございますか」
小坊主
と湛海律師が問いただすと、
聖天様
「おまえは、随分以前、そう、1669年寛文9年の春の頃であったか、
聖天様
洛東粟田口の歓喜院に住んでいたとき、世間の名利に貪着して大願を発し、
聖天様
数百日の間、聖天供を修して供養を続けてくれた。
聖天様
その際、大願成就まで二十年はかかると思っていたであろう。
聖天様
その二十年の期限が来年に当たっているのだ。
聖天様
おまえは不動明王に心酔して、大願を捨て去ってしまったが、俺は捨ててはいないぞ!
聖天様
昔のように我を供養せよ!!、
聖天様
余計な苦労をして、不動尊のお姿を造立しなくても、尊像はおまえが造ったものと、院達が造った像で充分ではないか。
聖天様
我は大日如来の化身であり、仏法においては、悟りの境地を得るための秘尊である。
聖天様
我を供養すれば、おまえの願いはことごとく成就しよう」
小坊主
とそのように告げられた。
湛海律師
「それでは、その成就とは、どのような願いが叶うのですか」
小坊主
と問いかけると、
聖天様
「まず第一に、当山を大伽藍とし、仏法繁昌の霊地となし、門前には多くの人々を住まわせて、三宝を供養させるであろう」
小坊主
とお答なさった。
女性
大伽藍(だいがらん)は寺の大きな建物の事を指すので、当山(=現在の宝山寺)を大きな寺にし、仏法繁昌の霊地となし、門前には多くの人々を住まわせて、三宝を供養は、三宝に対しての敬意を表し、金銭で敬意を表すという意味を含んでいるので、金銭で苦労することもないと仰っているのですね。
小坊主
そうだね。
女性
湛海律師は、どうお答えになるのでしょう?
小坊主
実は湛海律師は、決めかねてぐずぐずしていたんだ。すると聖天様は、
聖天様
「さだめて、耳寄りな話であろう」
小坊主
と申されたんだ。
女性
”さだめて、耳寄りな話”とは、まちがいなく聞く値打ちのある話だろう?という意味ですね?
小坊主
そうだね。本当に素晴らしい、本来なら二つ返事でよろしくお願いします。という話だね。
女性
で?湛海律師はなんとお答えになったんですか?
小坊主
湛海律師は、
湛海律師
「それでは、未来世はどのようになりますか」
小坊主
と聖天様に聞いたんだ。すると聖天様は、
聖天様
「釈迦如来が入滅されて五百年以後は、徳を積んだ高僧も、臨終の際には、南無阿弥陀仏を唱え、極楽浄土に生まれることを、この上もないこととしている。
聖天様
おまえも臨終を迎える頃ともなると、同じように、極楽浄土への往生を願うようになるのだ」
小坊主
とお答えになったというんだ。
小坊主
湛海律師が、まだどうしようかと躊躇している間にも、
湛海律師
不動明王は、聖天の言うことはいっさい避けるようにと、思し召されている。そんなことが、明王と心が通い判っていたのだ。
女性
不動明王がそのようなことをお考えになっているのでしょうか?
小坊主
いや..でも湛海律師は頑なにそうお考えになっているみたいだね。
小坊主
だから、聖天様に湛海律師は、
湛海律師
「不動明王には重々のお誓いをしております。
湛海律師
私の本誓は、明王の悟りの境地を得るために修行を積み、その呪を受持し、ついに悟りを得れば、永きにわたって衆生を彼岸に救い渡すことであります。
湛海律師
また、弥勒菩薩がこの世に下生されるまでの間、つねにつき従って給仕に励み未来世に受けるべき果報の予言を授かり、
湛海律師
菩薩が下生されて、龍華樹の下で悟りを開かれ、如来になられた暁には、過去世の喜見菩薩が、日月燈明仏に供養されたように、
湛海律師
この身を焼いて弥勒如来に供養いたします。
湛海律師
この願いは変えることができないほど、私の決心は強固です。
湛海律師
ゆえに、今は聖天のご意向に従うわけにはまいりません。
湛海律師
ただ勝手ではございますが、修行が成就できますように、離れたところからお護り下さい」
小坊主
と申し上げたんだそうだ。
女性
えっと・・・聖天様怒りますよね・・・
小坊主
すると聖天様が、
聖天様
「そうであれば、閉関も取りやめ、断穀も中止とし、人の出入りも自由にして、今までのようにせよ」
小坊主
といわれましたが、
湛海律師
「そのようにはできません」
小坊主
とご返事されたらしい。
小坊主
すると、すべてのことを知りつくしておられる聖天様ではありますが、機嫌も損ねてお帰りになったんだって。
小坊主
ま・怒るよね。普通に考えて。
女性
ええ。怒りますね。
小坊主
次回もお楽しみに~
合掌
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