僧侶様の法話
さて本日より彼岸の入りと成りますが本日は、彼岸に付いて講釈して見たいと思います
一般的には、彼岸と謂うと春と秋のお彼岸が思いつかれると思いますが彼岸とは、所謂、悟りの世界を意味し逆に迷いの世界を此岸(しがん)と申します。
要するに春、秋の中日は、真東から真西に太陽が沈む事から西方浄土(彼岸の地)へ一番近い日と謂う事から御祖先の供養が行われます。
さてこのお彼岸の行事は、日本独自の行事なのですが元々は、神道の行事で昼と夜の長さが同じ特別な日に祖霊を奉る行事で御座います。
其の行事が浄土信仰の広がりと共に春分、秋分には、太陽が真西へと沈む事に因み【西方浄土の考え】仏教行事として行われるように成りました。
何故、神道の行事が?と思われる方も多いですが抑、明治以前は、神社もお寺も一緒で神前で読經が行われたり僧侶が神主を兼ねたり神主が僧侶を兼ねて居ましたが【神佛習合思想と申します】明治政府の意向に因り現在のような住み分け(神仏分離令)に因り現在の形に変化したのです。
さて、春と秋の彼岸には、「中日」を挟み前後三日間有りますが中日は、丁度、春分、秋分と謂われる樣に日の出と日没が同じ時間と為ります。
其の事から仏教思想の中道(片寄りの無い事)が相まって良い日とされ又、祖先供養の思想から彼岸(悟りの世界)へ渡る日とされました。
更に日本は、四季の国で彼岸の頃が一番、快適な時期ですから寺院に参り読経や礼拝、法話等を聴き御祖先を敬い佛樣の心を知り正しい信仰を持つ機会と為った訳です。
有る落語家が「彼岸中は、僻んじゃいけない日」と言ってましたが応に其の通りで悟りの彼岸は、僻みも恨みも越えた世界ですから彼岸の地に居られる佛樣の心を観じ心を豊かにする期間と為ります。
応に春に土を耕し秋に収穫し感謝する其は、心も同じ事が言えますね
智恵の言葉を聞き実行し心を耕し豊かに生き人生を楽しむと謂う事に御座います。
然し、現在の世の中は、拳と拳を合わせる時代で大変世知辛い世の中で御座います。
即ち拳(節)と拳を合わせる事は、不幸せの近道に他成らないのです。
さて以前もお話し致しましたが合掌は、心を鎮め様々な良い影響を心身にもたらしてくれますし皺と皺を合わせ御祖先や全てのものへの感謝の気持ちが幸せへの道標と為るので御座います。
又、彼岸は、命を考える期間とも申しまして以前にもお話致して居ますが仏教では、十重禁戒を以て生活面の基本として居り再度お浚いお話すると
一、不殺生、(命を尊ぶ食物も命です好き嫌いせず食物を大切にしましょう。)
二、不偸盗(足りる事を知り無闇に欲しがったり盗まない様に致しましょう)
三、不邪淫(礼節を以た男女関係を保ちましょう)
四、不妄語(嘘や噂等をしない様に心掛けましょう)
五、不飲酒(酒に溺れ無い様に致しましょう)
六、不説過(他人の過ちを説かない様に致しましょう)
七、不自讚毀他(自ら率先して褒め罵らない)
八、不慳法財(教えも財も施す事を惜しまない様に心掛けましょう)
九、不嗔恚(怒らない様に智恵を身に付けましょう)
十、不謗三法(佛、法、僧の三法を大切にして謗らない様に致しましょう)
上記十の御約束を守る事が肝要と説かれます。
要するに御祖先から受け継ぎ樣々な命を以て生かされる自分を見詰めより良い人生を過ごす為の教えを実践する為の教えを実行する
其が、十重禁戒と為ります。
更に、彼岸の七日間の意味は、彼岸の入りから中日前日迄、身を清め仏教の勉強をし中日に御祖先と佛樣を供養し其の後三日間は、心静かに此からの人生や心を見直す…。
現在は、前後の行は、一般では、行われませんが彼岸を通して今一度、「心」と「命や命の繋がり」と謂うものを見詰め直し行動へと繋げて見ては、如何でしょうか?
又、彼岸の時期は、【暑さ寒さも彼岸迄】と申します様に気候も適度な事から自分を見つめ直し更に彼岸(悟り)へ近付ける樣、中日を挟み前後三日の計六日間に六波羅蜜を行ずべしと謂われます。
六波羅蜜とは、「布施」「持戒」「忍辱」「精進」「禅定」「智慧」が、六波羅蜜と呼ばれ順を追って講釈致しますが
【布施】とは、他に施し他の為に尽力を惜しまない事で
【持戒】とは、己を慎む事で布施や他の人の為に何かをすると見返りを求めたり「してやった」と高慢さが出易く成ります。
即ち其の心を慎み又、佛戒を保つ意味も有ります。
【忍辱】とは、所謂、徳を積み他の為に行動すると他から「偽善」、「綺麗事」と心無い言葉が有るかも知れません
然し、其の心無い言葉をも忍び耐え徳を積む事と成ります。
【精進】とは、戒を守り徳を積む事を継続し心を安定させる事と成ります。
【禅定】とは、心を中心に置き感情を定め如何なる事にも慌てず静寂を保つ意味と成り忍辱の樣に耐えるのでは、無く許して受け入れる寛容さを養います。
【智恵】とは、知識では、無く真理に基づき静寂と正観を以て行動し言葉を発する事で悟りの世界へ近付く事に成ります。
即ちお彼岸の期間とは、故人の追善の意味も有りますが縁有って生まれた命に感謝し又、自分自身も彼岸への行を重ねる時期でも有ります。
以上の事から御彼岸の期間とは、祖先との繋がりを通して自身を振り返る大切な期間でも御座いますのでお墓参りを含め自身と向き合う事も肝要かと存じます。
天祥 九拝
執筆者:瑞鳳天祥
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