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日本の歳時記【小正月】

小正月
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僧侶様の法話

執筆者:瑞鳳天祥

さて、一月も中場に御座いまして程好く正月気分も抜ける時期に御座いますな

正月十五日は、【小正月】で御座いますが古くはこの小正月までが松の内でしたが(元々は、この日まで門松を飾り夜の左義長に於いて御焚き上げ)江戸時代に徳川幕府の命により1月7日の【大正月】迄とされましたが、関東地方以外には広まらなかった様で御座います。

故に門松や正月飾りも七日で外す地域と十五日で外す地域と差異が有る様で御座います。

さて此の小正月の朝には小豆粥を食べる習慣があり、早朝に食べることから「暁粥」、小豆の色合いから「紅調(うんじょう)粥」と呼ばれて居りまして古くは『土佐日記』や『枕草子』などにも、小正月に小豆粥を食べた事が記されて居ります。現在でも東北地方の農村などに、左義長の前に小豆粥を食べる習慣が残っている地域が御座います。

此の小豆粥を食べる理由としては、其の色に御座いまして紅や朱、赤と申します色は、生命や血液、太陽を表す色に御座いまして慶事等に清浄の白と此の色を用いる理由に御座いまして其の色から命の息吹を取り入れる事で無病息災を願った訳で御座います。

さて、他には、小正月に【みずき団子(餅花)】と申しましてみずきの枝(柳の枝、ヌルデの枝の地域も御座います。)に食紅で色付けをした餅(団子)や縁起物を飾り其の年の五穀豊穣をを願います。さて此の餅花の意味は、養蚕地域では、繭玉に見立てて養蚕の予祝を致しますし稲作地域では、稲と見立てたり漁業地域では、貝や魚に見立てる様に地域差が有る様で御座います。

又、同様に【道具の年越し】とし農具のミニチュアをこしらえ豊作を祈願する習慣が残っている地域も有る様で御座いまして年神や祖霊を迎える行事の多い大正月に対し、小正月は豊作祈願などの農業に関連した行事や家庭的な行事が中心と成る様で御座います。

又、本来は人日(正月七日)迄、竈を休ませるはずの松の内に、忙しく働いた主婦を労う意味で、別称【女正月】とも申しまして場所に依っては男性が女性の代わりに料理等の家事を行ったり女性が料理を持ち寄り酒宴を開く地域も御座います。

さて、現在は、一月第二週月曜日が【成人の日】とされて居りますが元々は、十五日が成人の日に当たりまして嘗ては、【元服の儀】を小正月に行って居たと謂う事から、一月十五日は成人の日という国民の祝日として全国で成人式が行われて居りましたが其の名前から小正月との関連が解り辛く且つ高度経済成長期以降の都市化などの影響で小正月自体が馴染みが薄いものと成った事や十五日のみの祝日では、故郷での成人式が迎えられ無い等の意見も有り、2000年から成人の日は1月第2月曜日に祝日法の改定が為され現在に至ります。

尚、小正月の行事として、【左義長(どんど焼き)】が有名で御座いますが此は、歳神様が田の神に変わる儀式の様で御座いまして正月飾りを御焚き上げする儀式に御座いますな…。

尚、此の際に書き初めの書き損じを御焚き上げして其の灰が天高く舞い上がると文字の上達に繋がるや其の炎で焼いた蜜柑や餅を食べると一年無病息災で過ごせるとも謂われて居ります。

翌十六日は、【聖天様の御縁日】で御座いますが他には、【初閻魔】と申しまして閻魔大王の初縁日に御座いまして地獄の釜の蓋が開く日とも謂われ盂蘭盆同様に菩提寺や墓所に参る風習が御座いまして其の日に合わせて【藪入り】と申します奉公人が実家へ帰省出来る日でも有りました。

現在は、小正月の行事として左義長だけが主行事で御座いますが小正月の行事に於いても様々な意味合いや行事が有る様で御座いますし初春と申せど寒さ厳しい砌皆樣も御自愛戴き度存じます。

天祥 九拝

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